失声症の話

「突然声が出なくなる」
そんなのは漫画の中の話だと思っていました。


その日私は恋人さんに余計なことを言ってしまい、怒らせてしまいました。
私の世界では恋人さんは大きな存在で、だからこそ余計なことを言ってしまったことをひどく後悔していました。

言わなきゃよかったのにな
私はもう喋らない方がいい

そう頭の中をぐるぐるさせていたら、次に声を出そうとした時には何の音も出てきませんでした。
喉がキュッと締まっているような感覚で、出てくるのはカスカスの空気のような音。声帯が震える感覚が全くなくなっていました。

ものすごく焦りました。いつも自然とあるものが急になくなる心細さ、周りに発信できない不安、このまま声が出ないのかという恐怖。
私は隣の恋人さんにLINEチャットでそのことを伝えました。簡単にやりとりできるツールがあってよかったと思いました。
恋人さんは失声症について調べてくれ、声を出せるようにするよう努めてくれました。
声を出す練習をしました。まずはあ行から、そしてお行、う行、い行、え行の順に出るようになりました。発声の方法によるのか、出るようになるのに結構差がありました。
あとはストレスによるものなので、一生懸命話しかけてくれたりしました。

練習をしてなんとか出るようになった時、かなりホッとしました。それと同時にまたなる可能性があるという恐怖がありました。

他人から暗示をかけられることもありますが、自分が自分にかける暗示のほうが強力なものです。
自分を否定しないように、生きられたらいいのにね。